首、腰、肩、膝、肘、手首、手指、足首、足などあらゆる部位に対応します。
首や腰、手足関節の痛みを楽にして、それぞれの問題を解決するには、受身の治療に依存するのではなく、患者さん自身が主体となって診療に臨む姿勢が極めて大切であるということが最近の様々な研究によって明らかにされています。
つまり、「やってもらう治療」ではなく「自分自身で行う治療」が痛みの改善や機能の回復、再発予防により効果的なのです。
当院におきましては、痛みや痺れの治療で世界的に広く活用されている「マッケンジー法」という診療システムを取り入れております。
このような方にはマッケンジー法をおすすめします
まずは医師の診察によって、骨折、靭帯・腱断裂、感染症、悪性腫瘍の転移、馬尾神経障害、血液・血管の病気、関節の器質的障害、軟部組織(筋肉や腱)の障害などの重篤な原因がないか診断します。それらが除外された後、理学療法士による問診・理学検査(実際に体を動かした時の症状の反応を確認)を経て、セラピストのサポートのもとにご自分での取り組みを行います。
「エクササイズ」や「日常生活での留意点」以外の治療が必要な方には、速やかにその旨をアドバイスします。一般的には5回以内(国際マッケンジー協会認定資格を有し、一定以上の技量を持つ治療家の場合)の診療の中で治療適応かそうでないのか判断します。そのためマッケンジー法では不必要に診療を長引かせるような事はしません。
マッケンジー法の治療における基本的な流れとしては、まず「痛みやしびれの場所はどこですか?」、「どういった動きや姿勢が痛みを強くしますか?」など、しっかりと時間をかけてきめ細かい問診を行います。
さらに繰り返し同じ動作を続けたり、同じ姿勢を続けたりして、どのような痛みの変化が見られるかを検査します。こうして得られた情報を総合的に分析することによって、痛みの原因を調べ、その結果に基づいてひとりひとりにあった治療とマネージメント方法を提供します。
具体的には「自分で行えるエクササイズ」や「日常生活での留意点」を中心に治療法とマネージメント方法が組み立てられます。自分で行えるエクササイズだけでは、不十分な場合は、セラピストによる徒手テクニックを活用する場合もあります。
たいら手の外科・整形外科は、日本で2つだけの国際マッケンジー協会認定施設です。
国際マッケンジー協会認定施設にはマッケンジー法のエキスパートである上級認定セラピスト(Diploma MDT)が在籍しています。また、当クリニックの上級認定セラピストはインストラクター(マッケンジー法教育プログラムの指導員)の資格を有しています。
当クリニックでは、「MDTに対する理解がありCred.MDTの資格を有する医師」と、「インストラクターでDip.MDTの資格を有する理学療法士」が緊密な連携を取りながらチームでMDTを行っています。
たいら手の外科・整形外科
国際マッケンジー協会上級認定セラピストDiploma MDTは、国際マッケンジー協会の定めた認定試験に合格した国際マッケンジー協会認定セラピストCredentialed MDTが、さらなる知識・技術を習得するために設定された上級教育コースを修了し、最終試験に合格したセラピストです。
上級教育コースは国際マッケンジー協会とニュージーランドOtago大学およびスコットランドDundee大学とのコラボレーションで世界各国から毎年20名ほどの参加者を迎えて開講されています。コースは、大学で理論を学ぶパートと、海外(アメリカ、スコットランド、デンマーク、スウェーデン、ベネルクス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)の病院やクリニックで実際の患者様を診療する臨床実習過程から構成されており、この両方を修了したセラピストのみが最終試験の受験資格を得ることができます。
現在、この最終試験に合格した日本人3名を含む400名が国際マッケンジー協会上級認定セラピストとして国際マッケンジー協会に登録され、マッケンジー法のスペシャリストとして世界各国で活躍しています。
医師や理学療法士など医療資格を有する専門家を対象に国際マッケンジー協会主催のマッケンジー法教育プログラムが世界各国で開催されています。この教育プログラムは、Part A(腰椎基礎コース)、Part B(頚椎・胸椎基礎コース)、Part C(腰椎アドバンス・下肢コース)、Part D(頚椎と胸椎アドバンス・上肢コース)の4つのコースから構成されており、脊柱と四肢(手足)の筋肉・関節の問題に対する力学的な評価法と治療法を習得する内容となっています。
受講セラピストは病院・クリニックで臨床経験を積みつつ、年数をかけて4つのコースを履修します。全てのコースを修了したセラピストは認定試験を受験することができ、これに合格することで国際マッケンジー協会認定セラピストCredentialed MDTを取得することができます。
以下は、患者様より特に多く頂くご質問をまとめました。各ご質問をクリックすると答えが表示されます。
腰痛は大きな枠組みで3つに分けられます。
1番を除き、腰痛の95%以上が非特異性腰痛(=障害部位が特定できない腰痛)と言われています。
さらにこの腰痛症はひとつではなく様々な原因(筋・筋膜、椎間関節、椎間板、仙腸関節、すべり症、分離症、狭窄症など)から起こるとされていますがそれらを区別する明確な基準が存在しないため、ひとくくりに「非特異性腰痛」とまとめられています。常に整形外科受診理由の上位に入るにもかかわらず現在も腰痛改善のゴールド・スタンダードが存在しない理由は、腰痛が単純に身体的な理由のみで説明できず社会心理的要素が複合的に絡みあっていて原因の把握が難しいからなのです。しかし、原因が特定できないからといって不治の病ということではありません。非特異性腰痛の先々の経過は良好です。
1997年オーストラリアのビクトリア州で、「腰痛に負けるな」と銘打ったある大々的な腰痛撲滅キャンペーンが実施されました。広くメディアを通じて医療従事者と一般の人々に向けて行われたこの試みは、莫大な医療費削減を成功させ後の世界の腰痛改善に大きな変革をもたらしました。この成果を報告した論文は優れた研究に贈られるボルボ賞を受賞しました。キャンペーンでのメッセージは大きく3つです。
腰痛があっても…
オーストラリア以外でも腰痛改善の研究が盛んに行われており、各国には医療従事者向けの腰痛改善ガイドライン(改善方針)があります。2010年におけるヨーロッパを中心とする諸外国のガイドラインをまとめた研究では以下のようになっております。
一般的に推奨される腰痛改善ガイドラインのまとめ
急性腰痛(腰痛が生じてから3ヶ月以内)
慢性腰痛(腰痛が生じてから3ヶ月以上経過している)
急性期の非特異性腰痛の先々の経過は非常に良好です。痛みが強くなったり弱くなったりと波がありますが、90%以上の方が特別な治療を行わずとも数週間以内に症状は改善いたします。急性期で大切なことは慢性化させるリスクをできるだけ減らすことです。心配しないでできるだけ早くから体を動かしましょう。日本ではまだまだ「痛みがあれば安静」が常識となっていますが、実は安静にし過ぎることや日常生活の活動を制限することは腰痛を慢性化させるリスクを大きくしてしまいます。あくまでガイドライン(改善方針)ですので絶対的なものではありませんが、ご自身がお受けになっている改善法や説明と一度比べてみてください。
ところで話は少し逸れますが、マッケンジー法は現在世界で最も理学療法士に取り入れられている改善システムのひとつと言われています。しかしマッケンジー法の創設者であるロビン・マッケンジー氏が腰を反らせるエクササイズを行うことで腰痛が改善する人もいる事を発見した当時、腰痛への腰反らしエクササイズはよくない動作と言われており、日本では今でもそのように指導される事が頻繁にあるようです。日本人の腰痛に対する常識は世界から見ると常識ではなくなってきています。
腰痛におけるレントゲンやMRIなどの画像検査の最大の役割は腫瘍、骨折、感染症といった重大な問題を見逃さないことです。それらが除外された場合、「画像上の異常」と「実際の痛み」は一致しないことが多く診断には慎重を期するべきという報告があります。非特異性腰痛のほとんどが画像で変形を認めたとしても先々の経過は良好です。むしろ、骨のトゲや椎間板の厚みの減少などを治すことができないと指摘されることで、不安感が増大し、慢性腰痛へ移行させるリスクを助長しうることになります。
日々の診療の中でもっとも多い質問のひとつが「骨盤のゆがみ」についてです。骨盤のゆがみや矯正に関してはインターネットにもたくさん情報があります。そこでは理論的に骨盤の歪みによる身体にかかる様々なストレスが説明されています。しかしながら、現在のところ質の高い論文においては骨盤の歪みと腰痛の関連性は証明されていません)。これも画像所見と同様に考えることができます。
つまり症状が全くない人の骨盤の位置を計測してみるとどうなるでしょうか。おそらく左右差・個人差が見つかるはずです。完全に左右対称の体というものは存在するのでしょうか?さらには随分昔ですがレントゲン上における腰痛と腰の反り具合も関係ないとの報告もあります。
腹筋や背筋のトレーニングは一般的によく行われていますし、ある特定の症状には効果的である可能性があります。しかし、現在のところ体幹筋のトレーニングの効果やメカニズムについてはまだよくわからないことが多いようです。どのような方法でも全ての人に効果的なものはありませんし、逆に全ての痛みに全く効果の無い方法もありません。まずはご自身の持つ腰痛が腹筋・背筋トレーニングが必要なタイプの腰痛かどうかを知ることが先決です。
最近の研究では、短期的(1年以内)には手術の方が保存療法(集中的リハビリテーション)よりも早い改善が得られる傾向にありますが、長期的な結果は同じです。つまり改善する速さは違っても手術でも保存療法でも同じように良くなるという事です。様々な事情で早く改善を希望される方もおられるため一概にどちらが良いという事ではありませんが、緊急に手術を必要とするケースを除いて、実は本当に“手術しかない”ケースは意外と少ないのかもしれません。さらには、3ヶ月以上ひどい下肢痛がある手術待ちの患者を対象とした研究で、マッケンジー法を行うことで非常に高い確率で改善が認められたという論文もあります。
状態や時期によって違いはありますが、どのようにしてどの程度よくなるであろうという見立ては少なくとも5回以内に判断しお伝えします。効果の疑わしい治療をダラダラと引き延ばしたりはしません。
マッケンジー法は本来どの痛みにどの様な改善方法が適しているかを効率的にグループ化するシステムです。選択されたエクササイズはあくまでその結果なのです。正しい分類が腰痛改善の成否をわけます。痛みの改善が見られない場合それは体操の効果がないのではなく、ご自身の痛みとエクササイズの種類・行う回数・負荷の強さなど、何かが噛み合ってないことがほとんどです。ちょっとした工夫で効果がでることもあります。
改善がみられないもうひとつの原因は、日常生活における姿勢・活動の影響です。適切なエクササイズをしているけれども、日常生活での姿勢はあまり気をつけていない場合です。こういう方はかなり多いです。腰痛改善・再発予防のためには、何ができていて何が不足しているかをご自身で判断するのは難しいこともありますので、一度御相談下さい。
基本的には心理的因子のみが腰痛を引き起こすという確定的な根拠はありません。しかし、腰痛の慢性化に大きく影響するのが心理的因子という事は研究で徐々に明らかになってきています。ギックリ腰を経験されたことのある方であれば、その時の気持ちを覚えていらっしゃると思います。それまでは腰のことなど何も気にせず生活していたところへ、強烈な痛みとともに何が起こったかわからず不安感やパニックに陥ったのではないでしょうか。それは誰もが感じる当然の心理です。
そんな時に「できるだけ動かない方がいいですよ」としか説明されなければ当然動くことへの不安感は増大します。それでも多くの方は自然治癒力により徐々に自然回復します。しかし、少数の方は動かないことで腰の動きは悪くなり、少しの動きでも痛みが出るようになります。痛みが出ると、ますます動くことへの不安感が増すという悪循環が形成されます。多くの慢性腰痛がこのようにして始まるのです。急性腰痛のほとんどは数週間以内に軽快しますので、動かし方にこだわらないで痛みが残らない範囲でどんどん動いていくことが最も重要です。そこで心理的因子とは何か具体的に挙げてみます。ご自身に当てはまる項目がありますでしょうか。
すでに頑固な腰痛に悩まされていたり、年に何回も再発している場合も同様です。もしこれらの項目に当てはまるのであれば、それがご自身の腰痛に影響を与えている可能性があります。すべての人が慢性腰痛になってしまうわけではありません。腰痛になってもほとんどの方は数週間程度でよくなり、長期間に渡って悩まされる方は一部です。どこで違いが生まれるのでしょうか?それが心理的因子の影響といわれています。それは心の問題というよりも、”痛みのとらえ方”といったほうが正しいかもしれません。そこでは腰痛診療に関わる医療従事者や家族・知人の何気ない言葉が与える影響も小さくありません。
Koes, B., et al. (2010). An updated overview of clinical guidelines for the management of non-specific low back pain in primary care. European Spine Journal, (19)20, 2075–2094.
Hancock, M., et al. (2007). Systematic review of tests to identify the disc, SIJ or facet joint as the source of low back pain. European spine journal, (16), 1539-1550.
Buchbinder, R., et al. (2001). Effects of a Media Campaign on Back Pain Beliefs and Its Potential Influence on Management of Low Back Pain in General Practice. Spine, (26)23, 2535-2542.
Koes,B., et al. (2010). An updated overview of clinical guidelines for the management of non-specific low back pain in primary care. European Spine Journal, (19)20, 2075–2094.
Nicholas, K. & George. S. (2011). Psychologically Informed Interventions for Low Back Pain:An Update for Physical Therapists. Physical Therapy, 91, 765–776.
Battie, M., et al. (1994). Managing Low Back Pain : Attitudes and Treatment Preferences of Physical Therapists. Physical Therapy, (74)3, 219-226.
Deyo, RA., et al. (1990). Herniated lumbar intervertebral disc. Annals of Internal Medicine, (112), 598-603.
Boden, SD., et al. (1990). Abnormal magnetic-resonance scans of the lumbar spine in asymptomatic subjects. A prospective investigation. Journal of Bone and Joint Surgery, (72), 403-408.
Carragee, E., et al. (2006). Are first-time episodes of serious LBP associated with new MRI findings? The spine journal. (6)6, 624-635.
Levangie, P. (1999). The Association Between Static Pelvic Asymmetry and Low Back Pain. Spine, (24)12, 1234.
Hasson, T. et al. (1985). The lumbar lordosis in acute and chronic low-back pain. Spine, (10)2, 154-5.
Standaert, C., Weinstein. S. & Rumpeltes. J. (2008). Evidence-informed management of chronic low back pain with lumbar stabilization exercises. The Spine Journal, (8), 114-120.
Slade, S.& Keating. J. (2006). Trunk-Strengthening Exercises for Chronic Low Back Pain: A systematic review. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics, (29)2, 163-173.
Chou. R., et al. (2009). Surgery for Low Back Pain: A Review of the Evidence for an American Pain Society Clinical Practice Guideline. Spine. (34)10, 1094-109.
Fairbank. J., et al. (2005). RCT to compare surgical stabilization of the lumbar spine with an intensive rehabilitation programme for patients with chronic low back pain: the MRC spine stabilization trial. British Medical Journal. 330, 1233.
Svensson(2013)_ A structured Physiotherapy treatment model can provide rapid relief to patients who qualify for lumbar disc surgery: A prospective cohort study.
Albert(2012)_Efficacy of Systematic Active Conservative Treatment for Patients With Severe Sciatica. Spine
Main, C.& Williams, C. (2002). ABC of psychological medicine; musculoskeletal pain. British medical Journal, 325,534-537
Pincus, T., et al. (2002). A Systematic Review of Psychological Factors as Predictors of chronicity/Disability in Prospective Cohorts of Low Back Pain. Spine, (27)5, 109-120.
Main, C. & George, S. (2011). Psychologically Informed Practice for Management of Low Back Pain; Future Directions in Practice and Research. British medical Journal, (91)8, 820-824.